
むかしむかし——
といっても、ほんの少し前のこと。
あなたの心の中に、
ひとつの小さな“むすび目”ができました。
ぎゅっと固く結ばれたそのむすび目は、
痛いわけでも、苦しいわけでもないのに、
胸の奥でそっと重たくなるような存在。
どうして結ばれたのかは、
あなたにもよくわかりません。
誰かの言葉がひっかかったのかもしれない。
思い出したくない記憶がふと浮かんだのかもしれない。
気づかないうちに、
がんばりすぎてしまったのかもしれない。
むすび目は、
理由を語らず、ただそこにあるだけ。
でもね、
心のむすび目は、
無理にほどこうとしなくていいんです。
強く引っ張ると、
もっと固くなってしまうから。
そっと触れるだけでいい。
やわらかい布を扱うように、
ゆっくり、ゆっくり、
自分の気持ちに手を添えるだけでいい。
すると、
むすび目は少しずつゆるんでいきます。
まるで、
風がそっと糸をほどいていくみたいに。
心がほどけると、
胸の奥に小さな“空き地”が生まれます。
その空き地は、
次の一歩がそっと置かれる場所。
大きな一歩じゃなくていい。
誰かに見せる必要もない。
ほんの少し、
自分のためだけに踏み出す一歩。
深呼吸をひとつ。
あたたかい飲み物をゆっくり飲む。
窓の外の空をながめる。
そんな小さなことでも、
次の一歩は静かに形を持ち始めます。
心をほどくことは、
自分を大切に扱うこと。
次の一歩を見つけることは、
自分の未来にそっと灯りをともすこと。
今日も、
あなたの心がやわらかくほどけて、
その先にある小さな一歩が
静かに見えてきますように。


