『はるいろの相談室 ー こぐまさんの手紙』

森に、やわらかい春がやってきました。
風はすこしあたたかくて、
淡いピンクの光が、木々の影をそっと揺らしています。

丘の上には、
生成り色の小さな相談室がぽつんと立っていました。
名前は「こはる」。
扉のそばには、ちいさな✿がひとつ、
静かに咲いています。
その日、
こぐまさんがゆっくりと丘をのぼってきました。
胸の奥には、
「仕事を覚えられない」
「また怒られるかもしれない」
「自信がなくて、朝がつらい」
そんな気持ちが、重なっていました。
こぐまさんが書いた手紙には、
淡いグレーのインクで、
ていねいな文字が並んでいました。

こはるはその手紙を
静かに、ゆっくりと読みました。
急がず、せかさず、
ただそのままの気持ちを受けとめるように。
返ってきた手紙には、
やわらかいピンクの言葉が並んでいました。
「そんなふうに感じていたんだね」
「その気持ち、ここに置いていていいよ」
「覚えられない日があっても、あなたはだいじょうぶ」

こぐまさんは、
胸の中の“つかれ”が
すこしだけあたたかくなったことに気づきました。
春の光が、
心の奥にすっと差しこんだような気がしたのです。
そして、
こぐまさんは小さな願いを見つけました。
「今日は、ひとつだけゆっくりやってみよう」
こはるは何も指示しません。
ただ、そっと寄り添うだけ。
丘を降りていくこぐまさんの背中には、
淡いピンクの芽がひとつ、
ふわりと光っていました。


